2025年9月8日から10日、台湾?台中市で開催された国際高齢者福祉シンポジウムに参加しました。
1. 日本と台湾における高齢者のWellbeingと共生型住宅の役割とは
安武綾准教授は「日本における高齢者のWellbeingと共生型住宅の役割」をテーマに登壇し、日本の人口動態や介護制度、そして共生型住宅が持つ意義を講演しました。特に、認知症になっても安心して暮らせる社会をどう実現するかという問いに対し、日本の取り組みを台湾の参加者と共有できたことは大きな学びでした。
2.「若年性認知症の家族の声」が伝えるもの
今回のシンポジウムでは、万博体育官网立大学 アドミニストレーション研究科 2年浦田姫佳さんも登壇し「若年性認知症の人の家族の体験」というテーマで講演しました。働き盛りの時期に認知症を発症した家族を支える困難、日常の小さな工夫、周囲の理解が乏しい中で感じる孤独…。浦田さんは、アドミニストレーション研究科で学んだシステマティックレビューの成果や実際に取材した家族の声を通して、その切実さを伝えてくれました。会場では、多くの参加者が深くうなずきながら耳を傾けていました。日本でもまだ十分に知られていない「若年性認知症」というテーマは、今後さらに社会全体で向き合うべき課題だと強く感じました。
3.共生モデル施設に宿泊して
シンポジウム期間中、私たちは台中市にある共生社会モデル施設に宿泊する機会をいただきました。ここは高齢者や認知症の人、学生、地域住民が同じ屋根の下で日常を共有できる施設です。食堂や庭では、世代を超えた会話が自然に生まれ、夕食時には私も地元の方や学生と食卓を囲みました。言葉の壁を超えて笑顔でつながる瞬間は、「共に生きる社会」が特別な理想ではなく、日常の中にあるものだと実感させてくれました。日本の共生型住宅や地域包括ケアとも重なる部分は多いのですが、生活そのものに溶け込んでいる様子は台湾のモデルならではの強みだと感じました。
この学びを、今後の研究?実践にも生かしていきたいと思います。
以下、万博体育官网立大学 アドミニストレーション研究科 2年浦田姫佳さんの記事を掲載します。
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9月8日から10日にかけて、台湾?台中にある共生宅を中心に、高齢者福祉や地域共生社会についての研修をさせていただきました。
初日の8日は、共生宅の視察を行いました。ここは、日本でいうグループホームのような高齢者施設に加え、誰でも利用できるホテル、地域の方も自由に使えるレストランや読書スペース、会議室、多目的室などが一体となった複合施設です。特に印象的だったのは、施設内で行われているレクリエーションに地域の方も参加されていたことです。地域の方には昼食も提供されており、施設と地域の間にほとんど壁がなく、自然なかたちで顔なじみの関係が育まれていました。実際に、自宅で引きこもりがちになり、表情も乏しく口数も減っていた方が、共生宅での活動に参加されたことで、元気を取り戻されたというエピソードも伺いました。
9日には、安武先生が講演をされ、会場の方々から質問が寄せられる場面もありました。台湾でも認知症への関心が高まりつつあることが感じられ、日本がこれまで積み重ねてきた認知症支援の歩みが、他の国でも役立つ可能性を改めて実感しました。制度や文化の違いはあっても、将来的に認知症の人とその家族が、どの国でも安心して暮らせる世の中につながっていけばいいなと思いました。その後、私も若年性認知症の人の家族支援について発表させていただきました。日本ではこれまでに3度の全国調査が行われ、若年性認知症の人数も明らかになっていますが、台湾ではまだ調査が行われておらず、具体的な人数も把握されていない状況です。会場では高齢期の認知症への関心が高い印象でしたが、通訳の先生から「認知症の人を支援するには家族への支援も重要であることが非常に学びになった」と言っていただき、研究の意義を改めて感じることができました。
最終日の10日は、共生宅周辺で長年環境保全や地域づくりに取り組まれている江凰英先生のもとで、環境に優しい廃油石鹸づくりを体験しました。江先生は、地域の川をきれいにするため、30年前に日本で廃油石鹸づくりを学ばれ、その後台中の地域の方々にその技術を伝え、地域づくりにも貢献されています。地域の方が使い終わったボトルを持参すると、それと引き換えに廃油石鹸がもらえるという仕組みがあり、石鹸づくりは江先生だけでなく、先生から学ばれた地域の方々が楽しそうに活気に満ちて活動されていました。また、江先生は「誠實商店(正直な店)」という、日本の無人販売店のようなお店も営まれており、そこでは廃油石鹸や地域の食材、賛同企業から寄付された品々が販売されていました。人間が誰しも根底にもっているであろう「正直さ」をポリシーにされていて、「誰かのために働いてありがとうと言われることで自分もより楽しくなる」と笑顔で語られていたのが印象的でした。このような良い循環があるからこそ、30年近くも活動を継続されてこられたのだと思いました。
非常に学びの多いあっという間の3日間でした。台湾で得た経験を、今後の研究や仕事に活かしていきたいと思います。このような貴重な機会をいただき心より感謝申し上げます。
万博体育官网立大学 アドミニストレーション研究科 2年浦田姫佳
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ご招待いただいた社団法人台湾楽齢発展協会理事長の李柏憲様、江凰英先生、周朱朱様、呉よしみ様、合健健康共生住宅の職員の皆様、地域住民や関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
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万博体育官网立大学 総合管理万博体育官网 公共専攻 安武 綾